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ティーブレイク

シャトー・ギロー ソーテルヌ

chateau guiraudpicture2チャンドラー・バール著『匂いの帝王』(早川書房)を読んでいて、一番好奇心を持ったのがソーテルヌ(貴腐ワイン)についての記述でした。

 

 

 

『匂いの帝王』は、あの世界香水ガイドを書いたルカ・トゥリン博士が、人がにおいを認識するメカニズムは、人が分子の振動の違いをとらえ、その振動数によりにおいを認識するものと考えリサーチを進め、「振動説」として香料会社やネイチャー誌に持っていく(しかし認めてもらえない・・・)という内容のノンフィクションです。

 

 

 

本文の12行目から「貴腐ワインなんてものがあるくらいだ。高貴な腐敗だよ。」と語られ、トゥリン博士が好きなこのワインはたびたび文中で称賛されていました。

 

 

 

一方私は日常的にアルコールは飲みませんし、貴腐ワインといっても子供の頃にブドウを腐らせて作るやたらと高価なワインがあるという話を聴いたことがある程度で、今まで目にしたことはありませんでした。

 

 

 

chateau guiraudpictureこの本で紹介されているソーテルヌはシャトー・ディケム(桁が違います)やシャトー・リューセックという高級なものばかりなので、そこまで高くなくともそれなりの品質を持っていそうなところを探して見つけたのが、ソーテルヌ第一級のシャトー・ギローです。

 

 

 

さて、コルクを開けてグラスに注ぐと、今までに嗅いだ事のないようなフルーティ感と若干のカビ臭さ(とは言っても変なにおいではないです)と樽のような木の香り、そして口に入れると滑らかなピーチのような甘さが広がります。それは完熟の果実をそのまま齧ったような味です。後味にはナッツのような香りも感じられます。

 

 

 

chateau guiraudpicture3改めてグラスから香りを嗅ぐと、熟したバナナやメロンのような強いエステル臭が感じられ、口に含むとピーチの様でもあり、アップルの様でもあり、グレープの様でもある・・・、ってこの味はミックスジュースではありませんか。

 

 

 

ざっくり言ってしまうと、アルコールの効いて、若干カビ臭く、舌触りが滑らかなミックスジュースといった感じになりますね。

 

 

 

しかし高貴な腐敗と呼ばれ決してチープな感じがしないのは、やはり豊かな香りによるものでしょう。とてもおいしかったです。

バニラチンキづくり 十四日目

vanillatincture14thpictureついに出来上がりました。マダガスカル産とタヒチ産のバニラチンキです。

 

 

 

香り自体はあまり七日目と変わらない気がします。

 

 

 

色の差はほとんどなくなりました。タヒチ産に合った濁りはすべて沈降しています。

 

 

 

この状態から濾過していきます。

 

 

 

vanillatincturepicture出来上がったのがこちらです。

 

 

 

見た目は同じですが、キャラクターは全く異なります。

 

 

 

マダガスカル産はバニリンの甘さにフェノリックな薬品臭さや、わずかにアシッド由来の酸の香りが感じられ、複雑で芳醇です。

 

 

 

タヒチ産はアニスノートのスムースさと、ヘリオトロープのようなフローラル感が最初に感じられ、バニリンの甘さは奥の方に芯となるような感じで存在しており、全体的にクリーミーでふわっと華やかな印象です。

 

 

 

軽く肌につけてみると、フレグランスに良さそうなのは、やはりマダガスカル産です。ベースノートに効きそうな存在感があります。

 

 

 

ただ、このバニラチンキは濃縮していないので、割と香りの飛びが早いです。

 

 

 

合成バニリンの1%希釈の方が持続性があります。

 

 

 

ビーンズの状態の複雑で豊かな香りを、官能的にはほぼ抽出できているような感じはしますが、強さや持続性に欠けるのでこのままでは実用性には乏しそうです。

 

 

 

また、双方のビーンズでカスタードクリームを作りましたが、コクのある贅沢なバニラを感じられるのはマダガスカル産です。タヒチ産もアニスノートの特徴など香気成分についての知識があれば興味深くおいしくいただけるのですが、タヒチ産=高級で深い香りというような先入観で食べると、実際は滑らかさや華やかさが特徴で、深い甘さではないため、「期待したほどではないな」と思われてしまう可能性はあります。

 

 

 

この2種類のバニラでずいぶんと楽しむことができました。興味のある方はビーンズの香りから楽しんでみてください。

バニラチンキづくり 七日目

vanillatincture7thpictureバニラビーンズをエタノールに漬けて一週間が経ちました。

 

 

 

見た目に色がだいぶ濃くなっています。

 

 

 

香りは数日間アルコール臭がきつかったですが、一週間経つとやわらぎました。

 

 

 

マダガスカルとタヒチの差はしっかりと感じられます。

 

 

 

というより全くの別物です。

 

 

 

マダガスカルはフェノリック、アニマリックな香気を備えた甘さでフレグランス的要素を感じますが、タヒチはラム酒とカスタードが混ざったような甘さで、このまま飲んでもおいしそう(実際は舌がとんでもないことになりそうですが)な、フレーバー的な香りがします。

 

 

 

おそらく、ここから大きな変化はないと思いますが、あと一週間待って仕上げの作業に入ります。

リラとウィステリア

lilas2016picture週替わりで様々な花が咲いていくこの季節、今回はリラとウィステリアです。

 

 

 

まずは、葛西臨海公園に咲くリラ。

 

 

 

ちょうど見頃でした。

 

 

 

香気は以前にねむの木の庭で嗅いだ時と同様、ターピネオール、フェニルエチルアルコール、シンナミックアルコールなどの甘い香りが感じられましたが、葛西臨海公園のリラはそれらの香りにプラスして、インドール(ジャスミンにも含まれる臭い香気成分)を強く感じました。

 

 

 

また、ベンズアルデヒドのアーモンドの様な甘さもありました。

 

 

 

たくさん咲いていましたが、香りでむせるほどではなかったので、ヨーロッパのリラと比べると香気は弱いのかもしれません。

 

 

 

wisteria2016picture続いて習志野の香澄公園に咲くニオイフジです。

 

 

 

学名の記載がなかったため、正確な種類がわからないのが残念でしたがニオイフジというだけあって、普通の藤棚の藤より強い香りが感じられました。

 

 

 

ざっくりした印象は、オレンジフラワーとシンナミックアルコール、そしてかすかなアニスノートです。

 

 

 

普通の藤はメチルアンスラニレイトに起因するブドウっぽい香りが感じられるのですが、このニオイフジはブドウよりオレンジフラワーのような濃厚な甘さが感じられました。(オレンジフラワーにもメチルアンスラニレイトが含まれる)

 

 

 

さらに現在抽出中のタヒチアンバニラの影響からか、アニスアルデヒドのようなもったりとした香りも感じられました。

 

 

 

その他、最近はハゴロモジャスミンが咲き始めているところがあったり、フリージアが咲き始めているところもあったり、あちこちで芳香を持つ花が咲いています。

 

 

 

そろそろスズランも見られるかもしれません。

バニラチンキづくり 一日目

vanillabeanspicture最近ハーゲンダッツやフレデリック・カッセルの影響からタヒチアンバニラが気になっていて、バニラビーンズを買ってみました。

 

 

 

比較のためにマダガスカル産とタヒチ産の両方を買って嗅ぎ比べていたのですが、合わせていくつかの文献を見ている間に、チンキにして比較してみてはどうだろう?と思いチンキづくりを試みることにしました。

 

 

 

写真のバニラビーンズはすでにカットしてしまったものですが、まずは見た目が違います。乾燥してほっそりとしたのがマダガスカル産のビーンズで、全体的に太めで短くしっとりしているのがタヒチ産です。

 

 

 

詳細は後日「香りのエッセー」にまとめる予定ですが、タヒチ産バニラ (Vanilla tahitensis)は、マダガスカル産バニラ (Vanilla planifolia)の亜種で、香気成分の構成が異なります。タヒチ産はマダガスカル産に比べてバニラらしい甘さの特徴となる香気成分バニリンの量が少なく、代わりにアニスやフローラル様の甘さを持つアニスアルデヒドやアニスアルコールが多く含まれています。

 

 

 

madagascanvanillapictureマダガスカル産の香りは、チョコレートのような甘さのバニリンとラム酒のようなフルーティさ、そしてフェノール様の薬臭さが混ざったような複雑さを持ち、カスタードなどにバニラビーンズを使うことで生まれる味の深みはこの香気の複雑さに由来していると実感できる香りです。

 

 

 

さほど柔らかくなく、ある程度乾燥もしているので、切りやすく、中の粒も取り出しやすいビーンズでした。

 

 

 

tahitianvanillapicture一方タヒチ産は、チョコレートのようなバニリンの香りに、ヘリオトロピンのようなパウダリーでクリーミーな雰囲気を持つ香りが同程度感じられ、アニスやミモザのようなもったりとした甘さも加わり、それだけでアイスクリームのような華やかで滑らかな香りを感じられました。

 

 

 

こちらのビーンズは水分を多く含んでいて、切ろうとするとブヨブヨと生きている感触がします。さらに中の粒もねっとりとした何かと混ざり合うように存在し、かなり気持ちの悪いテクスチャーでした。

 

 

 

vanillatincture1stpicture良く抽出できるように、さやに切り込みを入れて、中の粒を掻き出します。

 

 

 

写真は漬けてすぐのものですが、茶色い色が出ています。

 

 

 

抽出の終了予定日が5月2日なので、その日までどのような変化があるのか、引き続きリポートをさせていただきます。