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香りのエッセイ

■第一話 香水の魅力

第一話 香水の魅力

 人々の間で連鎖する香水の魅力

 

古代より人々は香りに魅了され、それを身につけ使用しています。その魅力とは一体どこにあるのでしょうか?

 

香水を使う一番の目的は、程度の差こそあれ自身の魅力を高める事だと思います。良い香りがすれば、人はその場に留まりたい、もしくはより近づきたくなる本能があるのではないでしょうか。

 

その一方で香水は人生において必ずしも必要なものではなく、人によっては生涯つけることない方もいらっしゃるでしょう。しかしシャンプーやボディミルク、洗剤などあらゆるものに香りがつけられており、あえて香水をつけなくても私たちはほのかな香りに包まれています。とはいえ、香水をつける事はシャンプーやボディミルクとは一味違う香り体験です。

 

例えば人生で初めて香水をつけるのはとてもドキドキする経験です。どんな香りになるのか?どれくらい周囲に香っているのか?周りが気付くかどうか?はたして自分のキャラクターと合っているのか?シャンプーやボディミルクを変えたからといってそこまで考える事は無いでしょう。これらの製品は主に自分向けの香りですが、香水は周囲にアピールするもので、香水をつける事で多かれ少なかれメッセージを発信しています。

 

いずれ香水をつける事はジャケットを羽織るのと大して変わらない朝の身支度の一つとなりますが、何年も香水を使い続けていても新しい香水をつける時はちょっとした緊張感が伴います。また、いくつかのお気に入りの香水を気分や季節、シーンに合わせて変える事もちょっとした日々の彩りといった様子で楽しいものです。

 

 

自身の魅力を高める以外の目的として贅沢な一時を得るという事もあります。天然香料のバラやジャスミン、オレンジフラワーなどの素晴らしい花々や、普段聞きなれないエキゾチックな響きを持つ木々やスパイスから抽出されたエッセンスは植物の生命そのものです。

 

一方合成香料は天然香料では表現できない香りを補い、より咲いている花に近い香りを再現したり、新たな香調を創作したりする為に作られる化学者の情熱の結晶です。

 

その様にして生み出された香料を、才能があり訓練された調香師(パフューマー)が絶妙な調和(アコード)で調香し香りは創られます。製造された香水は視覚的にも魅力的にデザインされた独創的なボトルに封入されます。さらにイマジネーションを掻き立てる香調説明やストーリーが語られ世界観を構成します。この様に創作された香水を直接身につけ香らせるというのは、とてもロマンティックで優雅な体験です。

 

これだけ香水が市場に溢れていると忘れてしまいがちですが、確かな香水はブルガリアのバラの谷で採られたオイルが入っていたり、マダガスカルで採られたバニラが入っていたり、世界の様々な場所で採られた花や木々、スパイスなどが一本の香水に凝縮されています。私たちは香水をひと吹きしそれらの香りを身につけるのです。

もうひとつの香水の大きな魅力は人々の記憶に残るという事です。私の記憶に残っている一番古い香水の記憶がGuerlainのMITSOUKOです。小学校低学年くらいの記憶でしょうか?印象的な和風の香りがあり、もちろん当時はそれをMITSOUKOであることはおろか、香水の香りである事すらわかりませんでしたが、十数年経ちMITSOUKOの香りを嗅いだ時「あの時嗅いだ香りだ」とすぐにわかりました。

 

また、LANCOMEのTRESORという香水も中学生位の時に良く嗅いだ香りで、苔むした木から滴る甘い香りの香水と認識していましたが、数年後香料の勉強をするようになり、Ionone(スミレ様の香り。数種ありそれぞれ香りが異なる)という香料を嗅いだ時に、あの香りと共通する香りだと直感しました。TRESORに使われているらしい香料であるとわかったのはもう少し後の事ですが、TRESORにもMITSOUKOにもMethyl ionone系の香料が効果的に使用されているようです。

 

たまに街中で「この香りどこかで嗅いだな」と思う事があります。以前知り合いの誰かがつけていた香りなのでしょうが誰が付けていたのか、どこで嗅いだのか思い出せません。香水と認識できるほどの量をつけてらっしゃらなかったのでしょう。しかし、その残り香は無意識の領域に置かれた香りの記憶に触れ、確かにその存在を証明するのです。

誰かが自身の魅力を高めるために香水をつける。その香水の香りが知らず知らずのうちに別の誰かの心をつかみその人の記憶に残る。

 

いつの日かその人が香水をつけた時、また別の人の記憶に残る。その様な連鎖が起こりうるのが香水の大きな魅力ではないでしょうか。そして、その記憶に思いを馳せる事は、忙しい日々に淡いゆとりをもたらす貴重な一時なのではないでしょうか?