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香りのエッセイ

■第七話 香りの語彙と表現

第七話 香りの語彙と表現

香りをどのように表現し伝えるか?

 

【香りを伝えるには?】

今回は香りの語彙(ごい)と表現についてです。香りは実際その物を嗅ぐ以外に体験できないので、目の前に無い香りを相手に伝える場合は、言葉にして伝えなければなりません。しかも香りは目に見えるものではないので、ある香りを的確に表現し相手に伝えるのは、なかなか難しい問題です。

口コミサイトでは化粧品や香水の香りに関する書き込みもよくみられます。今回のエッセーを読む事で香りを表現する参考になればと思います。

 

【まずは、もう一歩踏み込んだ表現をしてみる】

例えば、ある人が「甘い香りが好き」と言ったとします。それを聞いた人はどんな香りを想像するでしょうか?「甘いと言ったらお菓子の様な香りかな?」、「花の香りじゃないかな?」、「ピーチみたいな香りでしょう。」とバラバラな答えが返ってくると思われます。

そこで「花の甘い香りが好き」と言えば「フローラル系の香りが好みなのかな」と少しイメージしやすくなります。
「ローズの甘い香りが好き」と言えばさらに理解は深まります。「甘いと言ってもジャスミンやチュベローズのように濃厚な甘さを持つ香りではないのだな」と。

香りの仕事ではもう一歩踏み込んで、ローズでも「ハニー様の甘さを持つローズ」とか、「みずみずしくフレッシュな甘さを持つローズ」などと伝える事で、さらにイメージに近くなるように伝えます。

 

甘い香りでも、花の香りではない場合、チョコレートやキャンディー様のお菓子系の香りには「グルマン」や「スウィート」という言葉があります。

同じ甘くて食べられる香りでも、フルーツの香りの場合は「フルーティ」を使います。香水でよく使われるフルーティノートはピーチ、アップル、メロン、マンゴー、パッションフルーツなどがあります。その中でオレンジやグレープフルーツなども一見フルーティに分類されそうですが、レモンやライム、ベルガモットを含む柑橘系の香りは「シトラス」を使い、「フルーティ」とは別分類になります。

 

【花の香り フローラルノートを表現する際の難しさ】

通常花の香りはローズだけ、ジャスミンだけの様に単一で用いられる事は少なく、数種の花の香りが組み合わされています。これを特徴とした香調がフローラルブーケです。香りが組み合わされると単一の花の香り(シングルフローラル)より香りを特定するのが難しくなります。

香りの中からどの花の香りが特徴的に出ているかを感じ取ります。ローズ、ジャスミン、ミュゲ、ガーデニア、チュベローズ、オレンジフラワー、ヴァイオレット、ヒアシンス、カーネーション、ナルシサス、マグノリアなどの中から、「ローズとヴァイオレットを感じるなぁ」とか、「ローズ系ではなく、ジャスミンやガーデニアなどホワイトフローラル系かな?」の様に探っていきます。それぞれの花の香りの特徴が分かる様シングルフローラルの香りを覚えておくことが重要です。

 

【香りの世界で使われる独特な表現】
香りの世界では普段使われる事が無い独特な表現が用いられる事があります。これらの表現は話の受け手もある程度理解していないときちんと伝わりません。ここではいくつかの表現をご紹介します。

まず香りを表現する上で「グリーン」という言葉は良く使われます。グリーンとは青臭い様な香りでフレッシュと近い関係にあると思います。

 

例えば草を摘んだ時手に残ったちょっと苦い香り、果物の皮やヘタの青い感じや未熟な感じなどを「グリーン」と表現します。
しかし、ちょっと青臭いからといってなんでもかんでもグリーンと表現してしまっては面白くありません。「ハーバル」といった言葉も使ってみたいですね。ラベンダーやローズマリー、サイプレス、ジュニパーベリーなどハーブの香りがしたときは、ハーバルを使ってみましょう。

 

ハーバルと近い分類で「アロマティック」という表現もありこちらは、バジル、アニス、フェンネル、タイムなどの香りを表現する言葉です。

香水でグリーンに分類される有名な物はCHANEL社のN°19が思いつきます。ガルバナムの強いグリーンノートからオリスとローズのパウダリーなフローラル感が印象的です。
また、GUCCI社のENVYもグリーンノートが有効に使われておりヒアシンスのグリーン感(ヒアシンスはフローラルの中でもグリーンな特徴がある調合香料です。)とジャスミンの甘さが絶妙なバランスで輝きを放ちます。

次に比較的わかりやすい表現として「パウダリー」があります。パウダリーはミドル~ラストにかけて感じる、独特の粉っぽい香りです。香調説明にバニラ、トンカビーンズ、ヘリオトロープと書いてある場合はパウダリーな可能性があります。

 

個人的にはラストノートにムスクばかりが残るより、パウダリーな残香の方がセクシーで心惹かれる物があります。日本人の嗜好としてもパウダリーな香りは受けが良いそうです。Calvin Klein社のEternityやChloe社のEau de parfumなどが有名です。

「バルサミック」という表現もありますね。バルサミックは複雑な香りで、甘さ、ねちっこさ、ブランデー様の乾いたフルーティさなどを含んでいると思います。バニラアブソリュートはバルサミックですがスウィートでもありパウダリーなイメージもあります。

「アンバー」も微妙な表現で、オリエンタルノートを支えるどっしりとした琥珀色のイメージを持つアンバーもあれば、天然のアンバーグリスの透明感ある保留効果のある部分を表現したり、バルサミックな部分を表現したりする事もあります。

「アルデハイディック」はCHANEL社のN°5に代表される様な、トップノートに出るムワッとした香りです。ファッティともいわれる独特の脂肪酸臭で、このアルデハイドだけでは良い香りはしません。(種類によっては、みかんの白い部分みたいな匂いがする。)これが入ると曖昧な雰囲気を醸し出します。

これらの様な香りの表現は「香りの表現集」のページにまとめております。

【香りをどの様に表現するか】
香りの表現は「しっとりした甘さ」(触覚&味覚)、「静かに消えゆく様に香るラストノート」(聴覚)、「全体的にピンクっぽい柔らかい香り」(視覚&触覚)、「酸味のある香り」(味覚)など五感を使用した表現が可能です。

 

「しっとりした甘さ」と表現する事でうるおいを含んだ甘さである事が想像できます。「ピンク」を使えば「レッド」より淡い香り、マイルドな印象を伝えられます。

 

五感を使った表現は上記に述べた香りの世界の独特より様々な人と共有しやすい表現ですね。

 

また、身近な物に例えた表現も共有しやすいです。「森林、バナナ、仏壇、洗剤、ガソリン、鉄…」などなど。

 

そして、香水はトップ、ミドル、ベースによって香りが変化する為、トップはシトラスのフレッシュな香りでも、時間が経つとフレッシュさは無くなりパウダリーなラストが残る事があります。香りの特徴を書く際に、トップ・ミドル・ベースのどこが特徴的なのか加えるとわかりやすくなるのではないでしょうか?

【香りの特徴をつかんで表現する】
香りをぱっと嗅いだ時の第一印象「フローラルな甘さ?」、「グリーン?」、「もやもやしたフローラル?」、「グルマンなスウィート?」を捉えて、あとは分析的に「トップはシトラスかな?アルデハイディックかな?グリーンかな?」、さらに進んで「花の香りはローズかな?ジャスミンかな?それともオレンジフラワーかな?」、ラストは「ムスクがストレートに出ているかな?それともパウダリーさを感じるかな?オリエンタルなアンバー調かな?」などと特徴をまとめていきます。

 

しかし、香りの特徴的に感じる部分は必ずしも他の人と同じとは限りません。人生で積み重ねた香り体験は人それぞれ異なる為、特徴的に捉える部分が異なるからです。

私たちのウェブサイトでは「かおりのカレンダー」として、街中で比較的見つけやすい香りの花々を月ごとに紹介しております。

色々な香りに対して興味を持って意識して嗅ぎ、自身の香り体験を増やす事で香りの感性をより高め、自分の部屋や家、さらには地域へと良い香り環境を拡げていけたら素晴らしいですね。